春に咲いた花は秋に散る[3]
「おはよーー!」
同じ学年の皆が次々と時間通りに集合場所へと集まってくる。
そこにはおなじ学校の制服を着たわたしの同級生達。友達もいる。
広い学校とは少しだけちがう場所にならぶ七台の大型バス。
今日はこれに乗って公園へといくのだ。わたしたちとは切っても切り離せない「平和」という学習をするために。
わたしは車酔いをする人ではなかった。だから隣の席にすわったミナちゃんが窓側を希望してもわたしはうなずいた。ミナちゃんは自分の自己主張の強い子で一緒にいるといろんな話を知れて楽しかった。
……でも、今になってみれば友達ってそんなものじゃないはずだ。
一緒にいて楽しいだけの存在じゃない。その頃の私には何もわかっていなかった。
ミナちゃんのとなりの席にすわって先生の話しを聞く。ミナちゃんはどちらかというとちゃんと先生の話しを聞かないタイプだ。
わたしが真面目に先生の話しをきいているのにもかかわらず、横から小さな声で話しかけてくる。
わたしはそういったタイプの人がきらいだ。
大人になった今でもきらいだ。
だって、真面目に話している人がいるのに失礼じゃないか、いつもそう思っている。
とりあえずミナちゃんの話しを流しながら先生の話しを聞きながらバスは目的地へと進む。
そんな時にわたしの体調に変化が起きたのだ。
その変化は大人になって数十年たった今でも同じ場所で起こるとわたしはパニックになるのではないかと怖くなる。
そう、車に酔ったのか、もともと調子が悪かったのか、気分が悪くなってしまったのだ。
隣の席で楽しそうにしているミナちゃんに、青い顔で話しかける。
「ねえ、バスに酔ったかも」
するとミナちゃんは顔を歪ませて冗談っぽく言った。
わたしは今でもその顔と言葉を忘れられない。
それはきっとその子の事を嫌いになった瞬間じゃないのかと思う。
友達なんかじゃなかった。
友達ならそんな事を言わない、
そんな言葉が彼女の口から出てきた。
「えーーーーー。吐かないでね」
は?何言ってんの?この子って思った。
それって一番に出てくる言葉なわけ?
わたしはこの言葉に傷ついた。
もし、このバスの中で吐いてしまったらどうなるのだろうか?
ミナちゃんと同じように吐かないでよって言われるのだろうか?
汚いって思われる?嫌われる?
気分がもっとわるくなった気がした。
ここにいるのは無理だと思ったんだ。
身体中の血がさーっと身体から引いていったような気分になってふらふらした。
「わかった。先生に言ってみる」
わたしは自分の座っている席をはなれ、先生のところへと行った。
けれど、「がんばれ、あと少しで休憩だから」との一言でどうこうしてくれそうな気配ではなかった。
けれど、また同じ場所にかえる事もつらい。
わたしは先生にお願いして、一番前の窓際という体調不良の子が座る席に座らせてもらった。
言葉は簡単に口から出る。
でも、その言葉は時には刃物になる。
わたしはミナちゃんの言葉に深く深く傷つけられた。
どうしようとパニックになった。
その傷はわたしの中で長い間癒る事はなかった。